Sync A World You Want To Explore

関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

機山ワインの雄姿山梨県で作られている、本格的スパークリングワイン(いわゆる“シャンパン製法”と言われる瓶内二次発酵ワイン)の機山トラディショナル・ブリュを飲みました。かなり忠実にシャンパンの製法を再現してつくっていると聞き、期待して飲んでみました。

飲み口ドライで、最初のインパクトは悪くなかったのですが、炭酸がかなり弱め。そして残念なことに、味に複雑さがあまりありませんでした。ドライなシャンパンは、その炭酸の陰に、複雑ななんとも言えない味わいとノドごしがあるからこそ、おいしいと思うのですが、この機山Brutは、ちょっと辛口白ワインがストレートに来すぎているような感じ。でも、このワインをくれた人いわく、「非常に熱心にシャンパン作りに取り組んでいる」そうですので、これからもっとおいしくなることに期待しています。

しかし、これを飲みながら思ったのは、やはり伝統というものは、ムダに積み重なっているわけではないのだな、ということです。

Moet et Chandonのワインセラー17世紀後半から18世紀初めを生きた、フランスの修道士ドン・ペリニョンが、シャンパン(というか発泡性ワイン)の創始者と伝えられています。実際には、それより前にすでに発泡性ワインはあったようですが、赤ワイン用の黒ブドウから白ワインを作り出し、発泡性ワインに仕立て上げるという現在のシャンパンのスタイルを作ったのは彼だと言われているそうです(ワイン王国2002年冬号の特集より抜粋編集)。

それから300年以上の歴史を経て生き残ったシャンパン。その技術を現地に行き導入したとしても、表面的な知識からは得られないtacit knowledgeというのは、それは山ほどあるのでしょう。

そういえば、アメリカにいるときに親しい教授がこんな話をしてくれました(詳細は記憶違いの可能性あり。要確認)。カリフォルニアの有名ワイナリー、Robert Mondaviでは、Cabernet SauvignonやMerlotのワイン(赤)はいい味が出せたらしいのですが、どうしてもPinot Noirではいい味が出せない。そこでモンダビ氏、フランスまで視察に出たそうです。するとPinot Noirのワインを造るときに、ブドウの茎(かな? Stemと言っていた)をつけたままワインを造っていたそうです。モンダビ氏がフランス人に「どうしてstemをつけたままなんだ?」と聞くと、そのワイン職人は「なんでって? 昔からPinot NoirはStemをつけたまま造るんだ」と答えたそうです。

そしてモンダビ氏はカリフォルニアに帰り、Pinot Noirのワイン造りにも成功したというわけです。

ナゼ?を実際に究明し、暗黙の知識を明らかにして事業に結びつける。この実践こそ、entrepreneurshipに不可欠なことなのかもしれません。