ハードウェア・スタートアップを支援するFabFoundryをニューヨークで設立してから2年。特に2017年になってから、さまざまな動きが加速しています。自分の頭の整理も兼ねて、2017年の最初の4か月を振り返ります。
- 米国でハードウェア・スタートアップへの投資が加速
- Appleが先進的製造業向けに1000億円規模のファンドを立ち上げるなど動きが加速。2016年上半期は120件の投資で計17億ドル(約1900億円)をハードウェア・スタートアップが調達
- 20億円ファンドの北米投資を担当
- 提携先のMaker Boot Campが国内外のハードウェア・スタートアップ向けにファンドを設立。北米スタートアップ向けへの投資と、アクセラレーター・プログラムの定期開催が決定
- ニューヨークでの提携先を拡大
- ハードウェア・インキュベーターNYDesignsと提携。所長が当社の顧問に就任。私がNYDesignsのExecutive In Residenceに就任。共同でMonozukuri Demo Dayを開催
- ピッツバーグとの連携を強化へ
- ピッツバーグ拠点のCarnegie Mellon大学の起業センターやハードウェア特化アクセラレーターAlphaLab Gearとの連携を強化。AlphaLab Gear所長が当社の顧問に就任
- 日本代表が就任、日本を第2の本社へ位置づけ
- 2月からアドバイザーとして参画していた中嶋信彰氏が5月から日本代表としてフルタイム勤務へ。日本側でのモノづくりエコシステムの整備と、北米スタートアップからの受注体制を強化
米国でハードウェア・スタートアップへの投資が加速
つい先日、Appleが先進的な製造技術分野向けに1000億円規模のファンドを立ち上げるとの報道がありましたが、米国ではハードウェア関連の投資が加速しています。半年ほど前にこのブログで書いた「米国でハードウェア・スタートアップへの投資が倍増」でも、投資が右肩上がりに伸びており、ハードウェア特化型のVCやアクセラレーターが増えている現状が分かります。
20億円ファンドの北米投資を担当
米国におけるハードウェア・スタートアップ環境の立ち上がりに呼応して、当社の提携先であるMakers Boot Campを運営するDarma Tech Labs社が、20億円規模のハードウェア特化型ファンドを設立しました。
FabFoundryは北米における投資業務を担当することになり、主に米国東海岸のハードウェア・スタートアップへのシード投資(1社10万ドル〜100万ドル)や、日本で開催するモノづくりアクセラレーター「Monozukuri Bootcamp」へ参加するスタートアップの選抜業務(含む投資)を担当します。
今回の提携にあわせて、私がDarma Tech Labs社の取締役マネージング・パートナーに就任しました。
昨年Monozukuri Bootcampに参加したLoomia社(当時の社名はThe Crated)やBonBouton社(当時の社名はFlextra Power)は、ニューヨークに戻った後も順調に成長し、ニューヨークのウェアラブル/ファッションテック系スタートアップとして注目されています。
今年7月に開催予定の第2回Monozukuri Bootcampに参加するスタートアップも決まり次第、順次発表して行く予定です。
ニューヨークでの提携先を拡大
ニューヨークでのハードウェア・スタートアップの発掘活動は、今まではミートアップやデモデーへの参加が中心でしたが、今年になって正式にハードウェア・インキュベーターNYDesignsと提携。私がNYDesignsのExecutive In Residenceとして、約20社のハードウェア・スタートアップが入居する施設で、スタートアップへのアドバイスの実施や、ワークショップ/デモデーなどのイベントの共同開催をしています。
この4月には、FabFoundryとNYDesignsで「Monozukuri Meetup featuring Rapid Prototyping & Design for Manufacturing」を共催しました。このイベントは「Monozukuri Demo Day Spring 2017」の一環として開催されました。
今回の提携にあわせて、NYDesignsの所長であるTristan Bel氏が当社の顧問に就任しました。
ピッツバーグとの連携を強化へ
ニューヨークはデザインやファッションに関連した企業や学校が多く、クラウドファンディング・サイトKickstarterのように新しいプロジェクトを支援する土壌があります。しかし先端テクノロジーに強い学校は少なく、いわゆる「ディープテック」のスタートアップはあまりありません。
そこでFabFoundryはニューヨークに続き、AIやロボット工学などの先進的な製造技術の分野で世界をリードするCarnegie Mellon大学や、全米有数のハードウェア特化アクセラレーター「AlphaLab Gear」を擁するピッツバーグ(ペンシルベニア州)との連携を強化していきます。
Carnegie Mellon大学の起業センターは2015年、著名VCのAccel(旧社名Accel Partners)の共同創業者Jim Swartzが3100万ドル(約35億円)を寄付して「Swartz Center for Entrepreneurship」として、大学の学部の垣根を超えたスタートアップを推進しています。
FabFoundryは今年の秋から、起業センターが開催する授業形式の「CONNECTS」で、「ハードウェア・スタートアップ」についてのセッションを定期的に開催し、米国ではあまり知られていない日本のモノづくりに関する啓蒙活動や、日本の製造業に関する誤解を解く活動を展開する計画です。
またピッツバーグのハードウェア特化アクセラレーターAlphaLab Gearの所長であるIlana Diamond氏が当社の顧問に就任しました。AlphaLab Gearは、ハードウェア・スタートアップ向けの国際ピッチコンテスト「Hardware Cup」の日本予選開催にあたって、すでに一緒に仕事をしていました。Diamond氏の顧問就任を機に、AlphaLab Gearに参加するハードウェア・スタートアップに対して、日本での量産支援を働きかけていく計画です。
日本代表が就任、日本を第2の本社へ位置づけ
おかげさまで、米国のスタートアップから「日本で製品のモノづくりを検討したい」という問い合わせが増えています。提携先のMakers Boot Campへ紹介する案件も、ファンドの設立を発表した3月以降、急増しています。
米国でのハードウェア投資の加速と、上記したさまざまな提携により今後、米国スタートアップからの依頼が急増するでしょう。そうなると次の課題は、モノづくりの規模や性質に合わせた、日本での「モノづくりネットワーク」の拡大となります。
そこで25年来の友人で、今年1月に自身が経営する中堅製造業を売却した中嶋信彰氏が日本代表として当社の経営に参画することになりました。
今年2月からアドバイザーとしてパートタイムで経営へのアドバイスなどをもらっていましたが、この5月から正式に「日本代表」としてフルタイム勤務になりました。日本側でのモノづくりエコシステムの整備と、北米スタートアップからの受注体制を強化します。
ハードウェア・スタートアップといっても、消費者向けIoT製品を開発するスタートアップばかりではありません。実際ニューヨークは、大手企業の本社がひしめき合っており、B2B(企業間取引)型のスタートアップが数多く存在します。また東京や大阪のような大都市が抱える課題を共有しており、こうした「都市型課題」を解決するためにハードウェアを使ったソリューションを提供するスタートアップが少なくありません。
日本を「モノづくりの拠点」としてだけでなく、都市型課題解決のためのモデルケースとして考え、日本企業との事業提携を視野に入れて事業開発をしたい、というスタートアップに対しては、ファンドからの投資と日本での量産支援だけでなく、日本で投資家や事業パートナー候補とのマッチングの機会が催されるMonozukuri Bootcampへの参加を促しています。
去る2月には、ICC Fukuoka 2017のCATAPULT(カタパルト)-スタートアップ・コンテスト-に参加させていただき、久しぶりに日本でスピーチをさせていただきました(英語が得意なわけではありませんが、日本語の方がプレゼンは緊張します)。
FabFoundryは設立2周年!
FabFoundryは2017年2月で、設立2周年を迎えました。「ハードウェア・スタートアップのためのプラットフォーム」を目指すFabFoundryを、これからもご支援ください!