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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

アップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が愛した製品の一つ「WebObjects」の開発終了が、アップルによって正式に確認されたようです。Business Insiderが伝えました。

Apple officially killed one of Steve Jobs' favorite projects

WebObjects was ahead of its time, and when Apple bought NeXT, it adopted the framework and even uses it to run parts of the online Apple Store even today.

WebObjectsが発表されたのは1996年3月にサンフランシスコで開催された、MicrosoftのProfessional Developers Conference (PDC)。このときのことは、今でも憶えています。

当時、私は初めての海外出張でサンフランシスコ取材に来ており、2月末のOracleの開発者向けカンファレンスを皮切りに、Netscape、Microsoftとモスコーニ・センターで開催された開発者向けカンファレンスをはしごしていました。

PDCのアジェンダには、確かスティーブ・ジョブズ氏が登壇することは記されていなかったように記憶しています。

ジョブズ氏は上記のビデオにあるように、30分ほどWebObjectsの説明をして、その後もその場に残っていました。特に記者向けのセッションなどは用意されていなかったのですが、驚くべきことに、メディアで実際にジョブズに囲み取材をした記者はほぼ皆無でした。なので私は、十分な時間をかけて、立ち話ながら1対1で、WebObjectsについて色々と質問することができました。

このときのことはジョブズ氏が亡くなったときに書きましたので、そこから抜粋したいと思います。

さようなら、そしてありがとう:スティーブ・ジョブズ氏逝去によせて

当時は日経コンピュータの記者だった私は、講演終了後に真っ先にスティーブ・ジョブズ氏のもとに駆け寄って話を聞こうとしました。最近では信じられないかもしれませんが、スティーブ・ジョブズ氏に駆け寄ったメディア関係者はなんと私だけだったので、たっぷりと立ち話をさせていただきました。

ただメディア関係者はいないものの、私が彼に話を聞いていると、定期的にカンファレンスの参加者から「スティーブとツーショットの写真を撮ってくれ」と声をかけられます。

それに対してスティーブ・ジョブズ氏は嫌な顔ひとつせずに、一緒に写真に写っていました。そんな写真を何枚も撮っているうちに(私はいつも参加者からカメラを渡されてツーショット写真を撮っていました)、いつも写真を撮られるみんながとても嬉しそうな顔をしていることに気づきました。

「メディア関係者は寄ってこなくても、スティーブ・ジョブズ氏は今もみんなのアイドルなんだな

その後、アップルはNeXT Computer社を買収し、スティーブ・ジョブズ氏はアップルの暫定CEOとしてアップルに返り咲き、iMacやiPod、iPhoneやiPadと今の生活になくてはならないものを数多く生み出したのは記憶に新しいところです。

WebObjectsはその後も、アップルのウェブサービスに広く使われており、アップルのウェブサイトやiTunesのサービスなども、長らく見ただけで「WebObjectsを使っているな」と分かるようなURLで運用されていました。今もこれらのウェブサービスの一部は、WebObjectsで運営されているようです。

WebObjectsそのものは2007年以降、新バージョンがリリースされておらず、今回の「開発終了」は現実の追認という要素が大きいのでしょう。しかしMacで今も現役で使われているOS「OS X」は、ジョブズ氏のNext社が開発していたもので、WebObjectsなどと一緒に1997年にアップルが買収し、アップルがそのまま主力製品として開発・販売を続けています。

今晩は、ジョブズ氏のWebObjectsの発表の様子を改めて見なおし、自分のスタートアップが行おうとしていることが20年後にどんな「人生」を歩んでいるのかを夢想してみたいと思います。