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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

先日、スタンフォードの西義雄教授のお話をお伺いした。西教授は米HPで研究所長や米テキサス・インスツルメントの副社長を歴任された方で、今はスタンフォードのナノファブリケーション・ファシリティーのディレクターを務められている。

僕はいわゆるナノテクについては、まったく知識がないが、僕のまわりに日経ナノテクノロジーの編集の人がいるので、ナノテク関連の動きや人について、小耳に挟む機会もある。今回のお話をお伺いできたのも、こういう縁からだ。

ナノテクと総称しているが、実際にカバーしている分野は広い。エレクトロニクス、バイオテク、果ては「私にはSFとしか思えない」(西教授)というトランスポーテーション分野まで。また「ナノ」といっても、ナノメートルより大きいマイクロメートル級のものでも、極限の微細構造を追及している場合は、「ナノテク」分野と言って問題ないそうだ。

一見すると、まったく異なる分野が「ナノテク」という名前で集まっていて、かえって混乱するだけではないか、とも思う。しかし最近は、専門分野がどんどん細分化されてしまっていて、逆に発展のブレークスルーが起きにくくなっているのでは、と西教授は指摘されていた。つまり、他の分野からのフレッシュなアイデアが、ブレークスルーを生み出すわけだ。

今年の日本人ノーベル賞受賞者のバックグラウンドから、最近のメディアは「研究者が自分の研究を進められる環境作りが不可欠」というトーン一色になっているように思う。確かにある分野を極めた「エキスパート」が、その分野を極めに極めて、ついにブレークスルーを成し遂げ、ノーベル賞クラスの「スーパー・エキスパート」になる道を整備するのは、非常に重要だろう。特に日本のビジネス界は、そういった研究者を、ともすると「変人」扱いしてきたからだ。

でも、それだけでは片手落ちではないか。ナノテクの分野で起きているように、ある分野を極めた「エキスパート」が、他の分野も同じようにある程度極めていって、「スーパー・ジェネラリスト」になることも、やはりブレークスルーを促すことにつながるんじゃないだろうか。

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もう1個、西教授はPre-competitionとcompetition、Post-competitionという概念を説明してくださったが、これについては、あとで続きとして書きます。