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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

NIKKEI NETを読んでいたら、「大学発ベンチャー、大手銀グループが支援競う」という記事があった。ただ、記事を読み進めると、支援といっても「会社の設立方法などを手ほどきする」などの座学的な印象。

 三菱東京フィナンシャル・グループが始めるセミナーは起業を考える学生や研究者を対象に会社の設立方法などを手ほどきする。第一弾として13日に筑波大学で開く。東京三菱銀行や三菱信託銀行、三菱証券などが演習問題や実例を交え、技術や特許をビジネスにつなげる方法を指南する。三井住友フィナンシャルグループは大学に企業を紹介するサービスを始める。大学の技術移転機関(TLO)の研究成果や技術情報を集約し、銀行の取引先企業に幅広く提供する。大学発ベンチャー企業向けに提携先になりそうな企業を集めた説明会を開き、産学連携を仲介する事業も準備中。6日と13日に東京・大阪で国立大学の担当者を集め会議を開く。

もし本当にこのぐらいの手ほどきでビジネスがまわるんだと支援側が思っているんであれば、長年日本でベンチャーが育たない理由の一つが理解されていないような気がするが、それよりも(最近の)大学発ベンチャーに対する新聞の取り上げ方が、なーんも分かっていない気がする。

金融機関がもしこの程度の支援しかしないのであれば、「これでは過去と同じで失敗するだろう」と厳しく指摘するべきだと思うし、もし金融機関側はもっと深く突っ込んで支援する体制を整えているのに、記事がこのような内容になっているのであれば、記事の質の低さが目に余る、と言えるのではないだろうか。

昨年初めに、東大の博士課程でバイオをやっている学生さんと話したときにも、「まわりは『今こそ起業』とか話しているが、そもそも教授をはじめとしてビジネス経験者はゼロ。起業支援の制度などもあるが、似たり寄ったりでいかにも心もとないので、海外のベンチャーに入って武者修行するつもりです」と言っていた。彼なんかは、当然セミナーで教えてもらう程度の内容は、自分で学習したが、それがかえって周りの環境の危うさ(経験のなさ)を露呈したようなもの。

論点がぶれてしまったが、大学発ベンチャーのインキュベーションが重要であることに異論はないが、支援する金融機関や報道するメディアがこれでは、ネットバブル崩壊のような末路が待っているのではないか、と暗い気持ちになる。せめて自分のまわりでは、こんなことがないように進んでいったらいいのにな、と思う。