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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

先ほど、Twitterを眺めていたら、911ネタが徐々に出始めていたので、もう何回か書いたかもしれないけど、自分の911ネタを書いておこうかなと思う。きっと、一人ひとりの911があるんだと思うので。

当時の自分の拠点は、ロンドン(イギリス)とピッツバーグ(ペンシルバニア州)。前日の2001年9月10日に、ピッツバーグからワシントンDC経由でロンドンに向かっていた。ワシントンDC(ダレス空港)を22:30か22:45に出るユナイテッド航空の便で、ロンドン(ヒースロー空港)に行く便で、その日にワシントンDCを出る最後の国際便だったような記憶がある(Departureの電光掲示板の一番下に、自分の乗る便がリストされていた映像記憶あり)。

ヒースロー空港には早朝に到着し、そのまま市内(Baker Street。シャーロック・ホームズのホームタウン)にあるLondon Business School (LBS) に直行し、午前中にGuy Kawasakiの授業を受ける。9月13日に、地元の投資家を審査委員に据えたビジネスプランの発表会があり、その直前にGuyにプレゼンのアドバイスを受ける、というのが授業の趣旨だったように思う。

授業が終わっても、当然教室には生徒(といってもMBAとEMBAの生徒なので25歳から50歳ぐらい)が残って、Guyと談笑しているわけですが、教室を出たある生徒(フランス人)が、両手を横に広げて小走りで「飛行機がWTCにぶつかったらしいよ!」と戻ってくる。本人からは危機感や悲壮感はまったく感じられず、ただの事故と信じているようだ。

彼は校舎の受付(といっても教室は2Fだったので、すぐ下)にある巨大テレビ(CNNが流れている)を見て、このニュースを知ったらしい。しかし、そこはロンドンにいる人間たち。みんなあわてて階下の巨大テレビに向かう。

まだ夏休み中ではあるが(そもそも、Guyがクラスをもったのも、夏休み中のサマースクール)、学校にはそこそこ生徒が来ており、テレビの前はまたたく間に人だかり。

CNN は1機目がぶつかったWTCを生中継していた。先ほどのフランス人を筆頭に、多くの生徒が単なる事故という感覚で報道を見ていたが(自分もその一人)、ニューヨーク出身のアメリカ人生徒やユダヤ系の生徒(イスラエル人やアメリカ人)は、すでに浮き足立った様子(ロンドンは金融の街で、ウォールストリート系のアメリカ人も多くLBSに留学している)。そこに2機目がWTCに突っ込むという惨事が発生して、現場の雰囲気は一転する。

CNNの報道も、明らかにテロと断定。ただ流している絵は対岸からWTCを映したもので、情報も非常に限定的。現場もパニックしている感じ。

ラチがあかない感じなので、持っていたノートPCでネットにアクセスするが、CNNをはじめニュースサイトは軒並みアクセス集中でダウンしているし、情報もほとんどなさそう。しかたがないので、みんなテレビの前で、固唾をのんでテレビを凝視する状況に。

そのうち、3機目がワシントンDCに突っ込んだ、という報道が入り、4機目がピッツバーグに落ちた、という報道が入るが、当のCNNはかなりの混乱状況で、「どこどこビルでは避難開始」というような断片的な情報が入るだけで、全体像はまったく見えてこない。

ただネットにつないでいたPCからは、徐々に情報が集まりつつあった。特にピッツバーグに墜落したという情報をトリガーに、日本の友人たちからメールが届き始める。ニュースサイトはつながらないが、日本とのメールのやり取りはふつうにできたので、そこを経由して、「20数機が行方不明」をはじめ、CNNでは報道されていないさまざまな情報が徐々に届き始める(日本で震災が起きたときに、地元では情報が不足するが、東京などでは情報が集約されていて、適切な情報を地元の人間に送り返せるのに似ている)。

ロンドンでは、すぐにロンドン上空が飛行禁止になり、次のテロ目標はロンドンだろうという雰囲気が流れる(実際に数年後にそれは実現するわけですが)。緊迫した雰囲気の中、WTCが倒壊する映像を、50人を超える生徒がライブで目撃する。

生徒の中にも、WTCに入っている職場出身の人間も少なくなく、友だちや家族が勤務しているという人間もいるわけですが、一方でもはやその場を動くという選択肢もなく、電話をする以外にはもはやテレビを見ているしかない、という状況。気づいたら夕方になっており、とりあえず解散して各自、自分なりの備えをするということに。

ちなみにピッツバーグにいる同級生たちからもメールがきて、学校が臨時休校になったことや、ピッツバーグ郊外に落ちた飛行機というのは、市内からはかなり離れた場所に落ちている、ということなどが散発的に分かっていった。

この日から、ロンドンとアメリカを結ぶ大西洋線は飛行停止となったので、いつ終わるともしれないロンドン滞在が始まることになる。

(あまりに長くなったので続きます。次は「疑心暗鬼の大西洋線(仮)」をお送りする予定です)