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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

先ほど読んだPitchbookの記事に面白いチャートがありました。米国の未公開企業における、創業者の持株比率の推移の折れ線グラフです。

未公開テック企業の創業者持株比率推移
未公開テック企業の創業者持株比率の推移。中間値は上場直前で10%強

米国には企業価値10億ドル以上の未公開企業である、いわゆる「ユニコーン企業」が多数あることが、日本では半ば羨ましがられています。一方で、そうした巨大な未公開企業における創業者の持株比率を知ると、少し意外に思われるかもしれません。

例えば2015年初めに、若干29歳(当時)の創業者CEO、Aaron Levie氏が上場したときは、彼の持株比率の低さが話題になりました。Fortune誌2014年の記事によると、彼の上場前の持株比率は4.1%(創業者ですが約1.6%相当のストックオプションが付与されていて、すべてを行使すると5.7%弱になる)。

日本の場合については私は詳しくないのですが、日本のスタートアップ業界に詳しいThe Startupの2014年の記事「起業家は持株比率にこだわるべきか?」によると「上場時に経営陣で40-60%くらいというのは一つ目安になる」とのこと。上場時の規模が日米で異なるとは言え、The Startupのを見ると、日本の上場テック企業の多くは「オーナー企業」と言ってよいレベルの保有率です。

もちろん、米国でも一部のスタートアップ企業は、創業者が高い比率のシェアを持っています。有名なケースはFacebook。上場時にMark Zuckerberg氏は28.2%のシェアを持っていました。さらに上場後も、議決権が異なる種類株を活用し、53.8%の議決権を維持しているようです。種類株を使って創業者の議決権を高めることに先鞭をつけたGoogle(現Alphabet)は、創業者のSergey Brin氏とLarry Page氏あわせて52.5%の議決権を維持しているそうです。

同業者の持株比率は市場環境も異なり、日米では隔たりがありますが、不確実性が高い現代のテック業界に創業者のリーダーシップが不可欠なのは日米で共通の課題なのかもしれません(トップVCの一角として有名なA16z=Andreesen Horowitzも、創業者がCEOを続けるべき、と長く唱えています)。

なお元記事では、他にもバイオテクノロジー企業と医療機器企業のチャートが載っていますが、この2業種では、テック業界よりもさらに創業者の持株比率が低いです。