Sync A World You Want To Explore

関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

早いもので、ブログに最初の記事を投稿してから20年が経過しました。いま読むと、少し恥ずかしい最初の記事は「なぜ?」「どうして?」と言えますか?」です。

記事の結びに書いてある

お役所の人が「ベンチャー創生が急務」なんてお題目を並べてますが、ぼくは思います。まず「なんかいいよね」を禁止して、「なぜ?」「どうして?」を奨励してみてはどうか、と

を読むと、20年前も日本政府は「ベンチャー創生」と言っていたことが分かります。

それはさておき20年前のこの頃は、米国留学中に立ち上げたスタートアップのことばかり考えており、ありとあらゆる人から聞かれる質問に、ひたすら頭を捻りながら答えていたように思います。

その中でずっと考えていたのが、2001年の夏に一時帰国したときに買った「新約コピーバイブル」に書いてあった「「なんかいいよね」禁止」というフレーズでした。

新約コピーバイブル

「なんかいいよね禁止」は、今のスタートアップのプロダクトの作り方(例えばグロースハック)にも通じるところがあると思います。

再び、20年前の記事に戻ってみます。

「なぜ?」「どうして?」と言えますか? - Sync A World You Want To Explore

1年前、偶然手に取った本の、それも偶然開いたページにあったコラムが、とても印象的だったので、つい買ってしまった本がある。「新約コピーバイブル」(宣伝会議刊)だ。その76ページにあるコラム『「なんかいいよね」禁止』(谷山雅計氏)では、「どうして?」の重要性をこんな風に説明している。

(前略)

それは、明日から、あなたの毎日の生活の中で「なんかいいよね」という言葉を禁句にしてほしい、ということです。

(中略)

たとえば、ここに「パルプ・フィクション」という映画がある。見たあなたは「なんかカッコイイよね「なんかすごいよね」を連発して大満足かもしれない。

けれど、それをつくったタランティーノ監督は「なんかカッコイイぞ」「なんか凄いぞ」と思いながら撮影していたわけではなりませんね。

(中略)

「受け手」は、一生「なんかいいよね」「なんかステキよね」と言い続けます。「作り手」は、「なぜいいのか。コレコレコウだからじゃないか」と考え続けます。

(後略)

「作り手」は、「なぜいいのか。コレコレコウだからじゃないか」と考え続けます』 ― 「なぜ」を考え続けることこそが、前例がない事業・サービスを、改善して社会に受け入れてもらうための、ほとんど唯一の手段なのではないかと思います。

そして、そのことこそが、私がこの20年間、欠かさず続けてきたことに違いないのです。

気づいたら20年間、とぎれとぎれではありましたが、続けてきたブログと「なんかいいよね禁止」。今日から、気持ちを新たに「なんかいいよね禁止」に邁進していきたいと思います。


今日の記事の要点は以上ですが、せっかく20年前の文章を読んでいるので、なんでこんな記事を書いたのかを、ちょっと綴ってみようと思います。

留学前は、日経BPで雑誌記者をしていたのですが、その頃の上司の一人が「この記事、もっといい感じに出来ない?」と言ってくるのに、「なんで、具体的に言えないのか。プロだろ」と思っていたこともあり、この「なんかいいよね禁止」は、とても刺さったことを憶えています。

「考え続ける」のが苦手なのは、別に日本人には限りません。もはや全く憶えていないのですが、この記事には、留学先のチームメンバーとのやり取りとして、こんなことが書いてあります。

去年、アメリカにいるときだって、ミーティングの最中に

ぼく「そもそも、どうしてこういう手法を適用しないといけないの?」

チームメンバー「だって、教科書に書いてあるよ」

ぼく「でも、教科書にあるこの手法が、どうして正しいと言えるの?どうも納得がいかないんだけど…」

チームメンバー「お前、何言ってんの!」

しかし、このブログを立ち上げて記事を書いてから1年後には会社を辞め、ブログのスタートアップに入社することになるとは、この記事を書いたときには想像さえしていませんでした。

そして20年後のいま、ニューヨークに住んで、卒業した大学発のスタートアップにVCとして投資をしていることも…。

「なぜ」なんでしょうね?