(本記事はPerl Street社の許諾を得て、同社が2022年11月30日に公開した「Can debt financing save ClimateTech hardware startups?」を翻訳したものです)
負債による資金調達(デット・ファイナンス)は、気候変動対策技術のハードウェア・スタートアップを救えるのか? 端的に言えば、それは予測可能な収益を即座に上げられる場合だけです。株式と違って、負債は、事業運営のための資金ではないので、気長には待ってもらえないのです
スタートアップが行き詰まる理由はたくさんあります。Y Combinatorの創業者であるPaul Graham氏は、「スタートアップは潰されるのではなく、自滅するのである」と言ったことで知られています。スタートアップが失敗するのは、競争などの外的要因ではなく、実行リスクや判断ミスが原因なのです。
気候変動関連のスタートアップの場合は、内的要因と外的要因の両方があります。既存インフラの領域で事業を展開し、リスクを避けた遅い開発サイクルに対処するため、構造的な問題に直面します。「パイロット版の提供中に倒産する」ことを避けるために、プロジェクト開発や財務などの部門を社内に追加し、必要悪としての「フルスタック化」をしなければならないスタートアップもあります。
フルスタック・モデルは、スタートアップが事業の商業化を、よりコントロールしやすくし、顧客に先行費用ゼロのHaaSソリューションを提供することで、技術の展開を支援するものです。しかし、フルスタック・モデルは、業務の実行にはリスクが伴います。成長が遅く、オーバーヘッドを追加するため俊敏性にも欠けます。また、資本集約的であり、特に株式市場の低迷期には、それが大きなリスクとなります。
技術系スタートアップにも冬がやってきています。2022年になって、多くのスタートアップで、企業価値を下げて資金調達をするダウンラウンドが広まりました。ロイター通信によると、2023年には、この状況は悪化すると予測されています。株式の希薄化が進むような株式による資金調達は、さらに利用しにくくなるでしょう。
さらに、高い株式資本コストは、ハードウェア・スタートアップが健全な単位経済性(ユニット・エコノミクス)を犠牲にして、成長を過度に優先させる可能性があるため、資金調達が厳しい時期には、不適切な戦略といえるでしょう。資本集約的な企業は、この嵐を乗り切るために、強力なファンダメンタルズと株式・債券金融の最適な組み合わせでビジネスを構築する必要があります。株式による資金調達は「ホームラン」を狙ったイノベーションには利用できますが、負債による調達は、健全で予測可能なキャッシュフローを中心に構成される必要があります。
ストラクチャード・ファイナンスの調達プロセスは複雑です。貸し手は、プロジェクトのあらゆる側面、特に財務的な実現可能性とリスクを厳密に分析することで、資金を効率的に配分します。準備の整っていない起業家にとっては、適切なツールなしでは地雷原となる可能性があり、しばしば大幅な時間やコストの超過を招くことになります。
Perl Street社は、気候変動対策のハードウェアを提供するスタートアップが、ベンチャー支援可能なビジネスモデルを構築できるよう、HaaSファイナンスのプラットフォームを立ち上げました。このプラットフォームにより、創業者はHaaSの収益モデルを構築・改良し、銀行融資が可能なキャッシュフローを実現し、多額の負債性資金を調達することができます。スタートアップの創業者は、収益を生み出す資産をより速く、希薄化することなく展開しながら、スリムで収益性の高い状態を維持することができます。このプラットフォームは、HaaSビジネスの構築と資金調達において一般的な、高額で致命的な時間やコストの超過を排除します。スタートアップ企業は、中核ビジネスである顧客獲得と製品イノベーションに集中することができます。
HaaS資金調達プラットフォームは、一連のツールによって支えられています。
これらは「パラレル・ダンス」なのです。
40社以上の気候変動関連のスタートアップ企業が私たちのプラットフォームを利用し、2億2000万ドル以上のデット・ファイナンスの申し出を受けています。現在、このプラットフォームは、分散型エネルギー資源、エネルギーや資源の管理、スマートシティとIoT、eモビリティ、自然を基盤とした解決策、循環型経済、食品(アグリテック)のプロジェクトなどと連携しています。
次回は、お客様のケース・スタディと教訓をご紹介します。
(後略)