昨年始めたポッドキャストXCrossingの最新回([ep 12] もらう側とあげる側から見たストックオプションとリターンの現実)で、日米でのストックオプション事情の話題になりました。その会話の中で、私が会社がストックオプションに割り当てる株式(いわゆる「ストックオプション・プール」。ESOPなどと略されることも)の割合が「日本では10%ぐらいだが、米国では20%近い」というような発言をしました。が、数字なので、ちゃんと確かめたくて、少し調べてみました。
「20%近い」の根拠となった記憶は、スタートアップの資金調達・株式まわりをサービスを手がける米Cartaが、彼らの顧客の実データを基にした統計データで、ストックオプション・プールが、従来の15%よりも20%に近づいている、と書いていたからです。
しかし、いま検索して調べてみると、CartaのTwitter上にしか調査結果がありませんでした(私は別のメディア(ブログかメール)で見た記憶があるのですが…)。
The average employee equity pool at privately held companies with post-money valuations of at least $1 million has, for the most part, increased gradually each year. pic.twitter.com/XMgMHo0CKp
— Carta (@cartainc) April 14, 2020
これを見ると、割り当てられている割合は年を追って右肩上がりで、2019年の時点では、平均値で16%〜18%ぐらいの間を推移しているようです(会社のステージや評価額によって異なります)。
実際、少し古い記事を読むと10%や、10%〜15%という数字がよく出てきます(参考: How Big Should Your Option Pool Be?)。
年を追って右肩上がりということは、社員の採用にストックオプションが果たす役割がますます大きくなっていることが伺えます。実際、2022年後半にテック企業のレイオフが表面化するまでは、大手テック企業は、スタートアップでは難しい待遇で採用活動をしていました。なので、スタートアップが切れるカードとして、ストックオプションの重要性が高まっていました。
日本でも10%の壁を超える動き
この動きは、日本でも徐々に始まっているようです。
日本を代表するユニコーン企業の1社、SmartHRの創業者で、今はストックオプションに絞った子会社NstockのCEOである宮田さんが「日本でも20%」と提言しています。
4-e)発行済み株式の「10%」では少なすぎる
日本のスタートアップ業界での、現時点でのSOのスタンダード(※)は「発行済み株式の10%までSOを発行できる」なんですが、今後も未上場で巨大化するスタートアップが増えると考えると、全社員に配るには少なすぎると思います。
※ 創業期にVCと結ぶ投資契約書で10%と書かれていることが多く、これを覆すのはけっこう大変。
肌感覚で、国内のスタンダードを20%にはしたいと思っています。従業員に配れるSOが単純に2倍になりますし、それくらいあれば、採用で使える武器が増え、スタートアップ業界全体の採用力強化につながります。
SmartHRでも、元々は上限が10%だったんですが、3年くらい前に株主達と協議して上限を十数%まで増やして、上限MAX近く発行しました。それでも、その後の資金調達にともなうダイリューションで10%を割ったりしているので、最初からMAX20%くらいまで交渉して枠を確保しておくべきだったと、今となっては思っています。
日本政府が掲げる「スタートアップ育成五か年計画」でも、ストックオプションまわりの法制度を積極的に改善していくということ。
近いうちに、日本のスタートアップでも、より多くのストックオプションを活用するのが一般的になりそうです。