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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

2022年の米国におけるスタートアップM&Aは、空前のM&A数になった2021年と比べて半減し、平年並みの数字で終わったと米Crunchbaseが同社のニュース媒体Crunchbase Newsで伝えています。

Forecast: Startup M&A Could Pick Up In 2023 As Fundraising Tightens Further
2021年は1700件のM&Aが実施されたが、2022年は1000件強にとどまった

スタートアップM&Aの件数は2022年初頭は、2021年に近い数字だったものの、景気の先行き不透明感から、大企業は空前のレイオフを実施し、手持ち資金を厚くすることに注力したためか、1年を通じてM&Aの件数は一貫して減少しています。

2021年は四半期当たり400件以上のM&Aが起きた。2022年は第1四半期の358件から、第4四半期には193件と半減した。出所: Forecast: Startup M&A Could Pick Up In 2023 As Fundraising Tightens Further

2023年になって資金調達環境のさらなる冷え込みで、スタートアップの企業価値は低迷しています。一方で大企業のレイオフは一段落しているため、2023年はスタートアップM&Aの件数が急増すると予想されています。


買収金額も小粒に

実際、2022年は買収件数が減っただけでなく、大型M&Aの割合も減りました。

Cartaの調査によると、2022年第4四半期は、2500万ドル(約33億円)未満の「小粒」なM&Aが71%を占めています。2022年第3四半期は2500万ドル未満のM&Aは全体の60%しかなく、一方で1億ドル(約132億円)以上の取引は、全体の11%を占めていました。

出所: State of Private Markets: Q4 and 2022 in review

Silicon Valley Bankの破綻で、株式による資金調達が厳しいスタートアップへの融資(ベンチャー・デット)の機会が大きく減少することが予想される中、スタートアップのM&Aが増えるのかどうか。今後の動静に注目したいと思います。

余談になりますが、米Cartaの調査は、自社の資金調達まわりのサービスを利用する、約3万社の未上場株式の情報を利用しています。これに対して米Crunchbaseの記事は、Crunchbaseが集めたデータを基に作成されています。

Q3 2021 Q4 2021 Q1 2022 Q2 2022 Q3 2022 Q4 2022
Carta 142 160 179 178 161 129
Crunchbase 434 429 358 273 249 193
Ratio 33% 37% 50% 65% 65% 67%


大型M&A案件が多かった2021年はCartaが把握しているのは全体の3割台だったのに対して、小粒な案件が増えた2022年は、把握している案件の割合が3分の2程度まで上がっています。Cartaのサービスは、SaaSサービスにしては高額の部類なので、ディールが終わるまでは株主への配分を正しく行うために使い続けるのに対して、清算後は速やかにサービスを解約すると思われます。また公開されないような小さいM&Aも把握できると思われます。ですので、Cartaは、小さいスタートアップの方が利用率が高いのではないか、と想像できます。