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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

一昨年度にKDDI総合研究所に「ラストマイルは「配達まで15分以内」の争いに ニューヨークで即時配送サービスが熾烈な競争」という研究レポートを寄稿しました。

昨年度に寄稿させていただいたのが「米国で立ち上がる「Hardware-as-a-Service」ものづくりの変化と多様な資金調達環境が後押し」というレポートになります。全文が先方のサイトでご覧いただけますので、ご興味がお有りの方はぜひ!(無料。ただしPDF形式です)。

記事中でも触れていますが、従来型(先払い型)のクラウドファンディングは、スタートアップ・プロジェクトの資金調達には、あまり適していないと思います。コミュニティ・メンバーから、寄付やその延長に近い株式型クラウドファンディングで、まず必要資金を集めて、MVP(Minimum Viable Product)を作る、というアプローチの方が、スタートアップ成功への近道ではないかな、と思います。

出所: Kickstarter

米国で立ち上がる「Hardware-as-a-Service」ものづくりの変化と多様な資金調達環境が後押し

使った分だけ利用料を払う「サブスクリプション(定期)課金」や「従量課金」のビジネスモデルが、ハードウェアの世界に浸透し始めている。Software-As-A-Service(SaaS)のハードウェア版にあたるHardware-As-A-Service(HaaS)による事業を推進するスタートアップは、米国で2021年頃から立ち上がり始めている。 Silicon Valley Bankが2022年6月に出した調査レポートによると、2021年にHaaS型ビジネスモデルで資金調達したスタートアップは、前年比89%増となり、従来のハードウェア売り切り型の事業モデルを採用するスタートアップに比べて、好条件で出資を受けていることが明らかになった。 HaaSが立ち上がった理由は複数ある。まず、スタートアップにとって長期的に見て、売り切り型よりHaaS型の方が経営が安定し、事業を成長させやすいことが、スタートアップや投資家に浸透したこと。次に、スタートアップがカスタム部品を極力、避けてものづくりをするようになり、最新のハードウェア・ソリューションの多くが、既存部品の組み合わせで作ったハードウェアや、既製品で実現できるようになってきたこと。そして、ハードウェア・スタートアップの資金調達が、主流のエクイティ(株式)にとどまらず、デット(負債)など、さまざまな資金調達の方法が選択肢になってきたことである。 HaaS型事業モデルは、幅広い産業・アプリケーションに浸透しているが、日本企業に馴染みが深い領域としては、産業用ロボットが挙げられる。ロボット・スタートアップでありながら、ロボットのハードウェアそのものは既存メーカーの製品を調達し、そこに独自機能を加えた形で、エンドユーザー企業に「サービス」の形で提供するものだ。 物流のボトルネックになっている「トラック運転手の労働時間制限」へのソリューションとして、米国ではトラックの自動運転が商用化されようとしている。こうした輸送(Transportation)領域でも、既存のトラック車両を仕入れ、自動運転装置を付加して、「自動運転トラック」として、エンドユーザーである運輸業者に利用した分だけ支払う「HaaS」のモデルが立ち上がりつつある。2022年後半から、米国ではリストラなどで、こうした事業のプロジェクトの一部が解散や縮小しているが、日本国内でささやかれる「物流の2024年問題」に対するソリューションとして、日本でもトラックの自動運転に対する市場の関心が高まってくるだろう。