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関 信浩が2002年から書き続けるブログ。ソーシャルメディア黎明期の日本や米国の話題を、元・記者という視点と、スタートアップ企業の経営者というインサイダーの立場を駆使して、さまざまな切り口で執筆しています

先日、ウェビナー「企業文化が変わるのを待たずに“担当者レベル“でオープンイノベーションを推進する方法」の講師を務めました。

タイトルの通り、このセミナーでは企業のオープンイノベーション部門に配属された「オープンイノベーション担当者」が、日々の業務をどう進めるべきか、という内容で、導入編としてお話しました。

あまり経験がない分野だったので不安でしたが、71%が「役に立った」、26%が「まあ役に立った」というフィードバックで、胸をなでおろしました(回答者99人)。

オープンイノベーション担当者の苦悩

一昔前では考えられないほど、あちらこちらで「スタートアップ」や「オープンイノベーション」という文字が踊っています。そして大企業がオープンイノベーションに取り組む上で欠かせないと言われるCVC(コーポレートVC)は、この5年で急増しました。

しかし実際にオープンイノベーションの担当になった方々にお会いすると、日々の業務で苦労されているようで、上記のウェビナーでも定員200人のところ、300人以上の申し込みがあったそうです。

by Andrea Piacquadio

オープンイノベーションの話というと、「会社の制度や社風を変える」「スタートアップのスピード感で事業連携」といった概念的な話になりがちです。実際、私も日経ビジネスの連載(「シリコンバレーの外」から見る米国の風景)では、そんなトーンで書いています。

実際、事業部門や経営幹部に「なぜ、このスタートアップと連携すべきか」を説得し、タイムリーに意思決定をしてスタートアップと組むには、こうしたポイントは極めて重要です。

オープンイノベーションの担当になった方の「真の苦悩」の一つは、自分がスタートアップやオープンイノベーションを、他人に説明して納得してもらえるほど理解できていないということなのではないかと思います。なので経営者がオープンイノベーションの「良き理解者」であることは、会社が一丸となってオープンイノベーションを推進する際には大きな力となります。

オープンイノベーション現場担当者の真の苦悩

一方で担当者は、経営的なオープンイノベーションの重要性を認識しているだけではなく、スタートアップ1社1社を正しく理解する必要もあります。

オープンイノベーション担当者の日々の業務は、スタートアップを探し、会い、評価すること。ただスタートアップはリソースに乏しく、ウェブを調べても十分な情報があるとは限りません。さらに実際にスタートアップに会っても、必要な資料が揃っているとは限りません。もし海外のスタートアップであれば、外国語によるコミュニケーションが必要になります。

その際に必要な現場での業務の進め方は、「意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源を活用することで、組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと」のような概念的なマクロレベルの話ではなく、「どうスタートアップを探すのか」「どうスタートアップと会うのか」「どうスタートアップから情報を引き出すのか」「どうスタートアップを評価するのか」といったミクロレベルの話のはずです。

しかし、オープンイノベーションの現場の仕事を見る・体験する機会はめったにありませんし、実践方法を教えてくれるコースなども少ないようです。「配属されたら何をすればよいのか」「こんなときにどうしたら良いのか」に現場目線で答えるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

そこで今回のウェビナーでは「まず、これをやってみよう」というレベル感を意識して、その導入として40分間のセミナーとして構成しました。

その中には、スタートアップと大企業の文化の違いや、日本とアメリカの文化の違いなどが、日々のコミュニケーションに及ぼすインパクトなどについても指摘しました。こうした点は経験者は体感的に分かっているものの、ビジネスに必要なスキルとして研修などで教えられていないので、多くの駐在員が課題として認識する前に帰任したりしてしまっているのではないでしょうか。

出所: 異文化理解力(英治出版)をもとに金沢大学先端科学・社会共創推進機構が作成

スタートアップは何を求めているのか

今回のウェビナーの構成はざっくりいうと以下のように流れになっています。
  • 「制度を変える」前に出来ること
  • 「スタートアップ式」で業務に取り組む
  • 「スタートアップ」と「大企業」の差を理解する
  • 国ごとのビジネスの仕方の差を理解する
  • 「透明性」を高める
  • スタートアップとの付き合いは「一期一会」ではない
  • 「スタートアップ」と蜜月になるべきは「担当者」

40分という制約があったため、物足りなく感じる方もいらっしゃると思います。

ですので、まずは資料を入手し一読していただき、興味があれば、録画(ビデオ)をご覧いただくのがよいかと思います。

資料とビデオは、JETROのJ-Bridgeというサービスを通じて入手可能です(当該ページにアクセスするにはJ-Bridgeに登録・ログイン後、改めて以下のリンクにアクセスしてください)。


1月18日にはニューヨークで、実践編のワークショップを予定しています。こちらは対面(オフライン)のみでオンライン参加は出来ませんが、好評であれば日本国内でも出来るように検討する予定です。